伯耆富士とも呼ばれる名峰・大山(だいせん)。この山は古くから、登る山であるより前に、拝む山でした。山そのものを神とあおぐ信仰が、ふもとの寺社と門前のにぎわいを育てていきます。

山岳信仰の山・大山

大山は、その堂々とした姿から、古代より神の宿る山として信仰されてきました。やがて仏教と結びつき、修験道(山伏の修行)の霊場として栄えます。中世には多くの僧坊を抱える一大宗教都市となり、僧兵を擁したと伝わるほどの力を持っていました。「山に登る」のではなく「山を拝む」——それが大山との古い付き合い方でした。

大山寺と大神山神社奥宮

その中心が大山寺・大神山神社奥宮です。大山寺は天台宗の古刹で、開創は奈良時代にさかのぼると伝わります。神仏習合の時代を経て、明治の神仏分離で寺と神社に分かれ、今の形になりました。

大神山神社奥宮へは、自然石を敷きつめた長い石畳の参道が続きます。この参道は自然石のものとして日本最長級とされ、歩くだけで気の引き締まる道です。米子側のふもとには里宮(本社)があり、夏と冬で人が行き来していました。

日本最大級だった牛馬市

大山の門前は、信仰だけの場所ではありませんでした。お地蔵さまへの信仰と結びついて、門前では牛や馬の市が開かれ、その規模は日本最大級にもなったと伝わります。参拝の人と、牛を曳く博労(ばくろう)が同じ道を行き交った——この「祈りと経済」が重なった話は、大山道(溝口道)と牛馬市でくわしく紹介しています。

今歩ける参道

いまも石畳の参道を歩いて奥宮まで参拝できます。秋には大山寺周辺が西日本随一とも言われる紅葉に包まれ、信仰の道が錦色に染まります。マップから場所を確認して、ぜひ自分の足で。

出典・参考