伯耆町の福岡という集落に、福岡神社があります。ここで毎年10月に行われるのが、蛸舞式神事(たこまいしきしんじ)。「日本三大奇祭のひとつ」とも呼ばれ、1986年(昭和61)に鳥取県の無形民俗文化財に指定されています。

海から、けっこう遠いのに、蛸。これだけで、もう気になりますよね。

どうして蛸なのか

由緒をたどると、海に行き着きます。

ご祭神の速玉男命(はやたまをのみこと)が船で海を渡っていたとき、熊野の沖で船が難破しかけた。そこへ無数の蛸が現れて、船を下から持ち上げて救った——と伝わります。神さまはその後、吉備(岡山あたり)を経て、この地へやってきた。だから蛸に感謝する神事が、山の中の集落に残ったのだ、という話です。

海から一番遠い場所のひとつで、海の神さまと蛸の記憶が祭として生きている。これは、熊野信仰がどんな道をたどってこの土地まで届いたのか、という大きな話にもつながっていきます。

どんな祭か

これがなかなか激しい神事です。

ふんどし姿の氏子たちが、藁で作った大きな蛸を抱えた男を持ち上げる。男は社殿の梁にしがみつき、そのままぐるぐると回される。「舞う」というより、回る。見ているだけで力が入りそうな、体を張った神事です。

開催はおおむね10月(第3水曜とされますが、年によって変わります)。コロナ禍では中断もあったので、見に行くなら最新の開催情報を必ず確認してください。山陰中央新報は2023年に「4年ぶりの開催」を報じています。

歩いて見るなら

うさぎのひとこと:船を持ち上げてくれた蛸へのお礼を、千年こえて山の上で続けてる。義理がたいにもほどがある。すてきです。


参考文献: